御箸の【真・行・草】
【真・行・草】とは、日本の伝統的な格付けのことで、元々は書道の【真書・行書・草書】から来ています。
【真(真書)】は正格(正しい決まり事があり、最も正式な物)
【草(草書)】は形にとらわれない、くずした風雅な書体
【行(行書)】は両方の中間、とされています。
この思想は、日本の様々な伝統文化や伝統建築にも取り入れられ、それぞれの格付けに応じた所作や物づくりが行われています。
物づくりの場合ですと使う素材や、形状を変える事でそれぞれの格式の違いを表現します。
◆この【真・行・草】の思想を御箸に反映させると、下記のように分けられます。
【真の箸】使い方や素材・形状などに決まりごとがあり、ルールを間違うとおかしく思われる御箸が【真の箸】になります。儀式的な場で使われる事が多く、何度も使う箸ではなく、一度限りの物が多いのが特徴です。
【例】茶懐石の取り箸(流派や料理によって、使う竹の種類や形状、節の位置を変えて使用される。)/茶懐石の利休箸/お正月の祝箸/お葬式の骨を拾う骨箸など
【草の箸】真の箸の対極にあり、特に決まり事などはなく、使いやすさよりも見た目の面白さや野趣な雰囲気を優先し、自由な発想で遊び心にあふれた御箸。
使いやすさは後回しになっているので、直接使う御箸ではなく取り箸として使用されるのが特徴です。
【例】竹の枝を使った取り箸/木の枝を使った取り箸/稀少な木を使った取り箸など
【行の箸】真と草の中間に位置する箸で、私は普段使いの箸、一番身近にある御箸がこれに当たると思います。真の箸とは違い一度だけの使い捨てではなく、長く使える耐久性が求められ、草の箸とは違い常に使いやすさが求められる。この二つの条件を満たすのは、私たちが最もお世話になっている普段使いの御箸になります。
【例】日本各地の塗箸/様々な材質の「木箸」や「竹箸」/牙や角で作った御箸など