箸職人が語る「御箸のお話」

◆私は、京都市右京区の世界遺産『仁和寺』の近くで【京都おはし工房】という『あつらえ(オーダーメイド)御箸の専門店』を経営している「北村 秋水(しゅうすい)」です。

高校卒業後、京都の老舗箸専門店で約11年間にわたり御箸の販売員として、御箸にまつわる仕事をしていましたが、店頭で販売しているだけでは御箸の全てを知ることはできないと痛感し、自分自身で一から御箸を制作し、最後の販売まで手掛ける事の出来る御箸専門店をこころざし、2003年3月に、日本初の『あつらえ(オーダーメイド)御箸の専門店』【京都おはし工房】を開業しました。

開業してから今年の3月で18年目を迎えます。思えば30年の長きに渡り、御箸の仕事を通じて多くの人から様々な事を教えていただき、たくさんの事を学んできました。

店頭でお客様から教えていただいた事もあれば、老舗の箸専門店の歴史や経験から、どんな御箸が良い御箸なのかという目利きを教わったことは今でも本当に感謝しています。ですが、御箸の販売員として私が知っていた御箸の知識と、御箸を作る職人となって実際に体験して得た知識は全く別物で、両方を知ってはじめて本当の御箸の世界が見えてきたように思います。

やはり「自分で実際に作ってみないと、見えない世界があったんだ」と、当時心の底から実感したのを今でもよく覚えています。

◆御箸を作る職人となるからには、材料に使う「木」や「竹」の事は当然深く知っていないといけません。御箸の「削り方」や「塗料」の種類、「道具・工具」に関しても広い知識が必要です。学んだ知識を総動員して、いろんな方法を試しながら、試行錯誤を繰り返して納得のいく物を作るのが職人の仕事です。

昔読んだ本の中に、「物づくりの職人は一生修行と勉強の繰り返し、満足してしまうと進歩は止まってしまうから」と書かれた一節が印象に残っています。まさしく、その通りだと思います。

そんな箸職人になってみて、いや箸職人になったからこそ見えてきた事、知ることができた世界は本当に奥の深い世界です。「御箸の販売員としての世界」と「御箸の職人としての世界」両方を経験したからこそ知ることが出来た興味深い『御箸のお話』を少しずつブログで語りたいと思います。関心を持たれた方は、ぜひ一度目を通してみて下さい。

このご縁が、最も身近な木工品『御箸』という大切な存在に気付く、一つのきっかけになれば幸いです。

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